◎ 精巣がん
この NCCN ガイドライン日本語版「精巣腫瘍」の翻訳は、原 勲／柑本康夫（和歌山県立医科大学）が監修した。 日本泌尿器科学会は、 わが国における精巣腫瘍の治療の均てん化・標準化を目的に「精巣腫瘍診療ガイドライン」を出版している。日本泌尿器科学会のガイドラインは、精巣腫瘍診療ガイドライン作成委員会が臨床的な視点から見て科学的に質の高い文献を選別し、現在の日本国内における診断・治療の選択に役立つ実践的なガイドラインである。一方、今回、日本語版の監修に携わった NCCN ガイドラインは、最新の研究内容を取り入れ、米国における精巣腫瘍の診断・治療についてのストラテジーを提案している有用なガイドラインである。 本ガイドラインに記載されている内容は、米国の医療技術と医療経済を背景としている点に留意する必要がある。 本ガイドラインは、精巣腫瘍の診断および病期別の治療法について日常診療における補助的な役割を担うガイドラインとして開発された。各病期 で 標準的な初期治療法はほぼ確立していると考えられる。 しかし、本ガイドラインに沿った治療をわが国で行う際には、保険診療のうえでの使用可能薬剤の相違や医療費の患者負担の違いなどについて留意すべきである。本ガイドラインで推奨されているペムブロリズマブについては、今のところ保険診療の範囲外となっている。 本ガイドラインについては、日本泌尿器科学会の「精巣腫瘍診療ガイドライン」と大きな相違点はないと考えられ、「精巣腫瘍診療ガイドライン」を基盤に、上記のような日米間での違いを理解したうえで、日常診療の参考にしていただきたい。
（文責： 一般社団法人日本泌尿器科学会 ）
本ガイドライン使用の留意点 1 ）StageII の分類に若干の相違がみられるので、注意する必要がある。 欧米での TNM臨床病期分類 では IIA ：最大径が2cm 以下の単発性または多発性の後腹膜リンパ節転移、 IIB ：最大径が2cmをこえるが、 5cm 以下の単発性または多発性の後腹膜リンパ節転移、 IIC ：最大径が 5cm をこえる後腹膜リンパ節転移、 となっている。 日本泌尿器科学会「精巣腫瘍取扱い規約第 4 版」では、日本泌尿器科学会病期分類として IIA ：最大径が5cm 未満の後腹膜リンパ節転移、 IIB ：最大径が 5cm 以上の後腹膜リンパ節転移、 を掲載しているが、本邦においても今後は上記のTNM臨床病期分類を使用し、次回の改定では日本泌尿器科学会分類を掲載しない予定である。 2 ）腫瘍マーカーである HCG- βの測定にあたっては、 mIU/ml ( または IU/L) のものを測定する。単位が ng/ml である場合は、 total の HCG もあわせて測定しておく。
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