[ 概要 ]
「前立腺癌は米国人男性に最も多く診断される癌であり、癌死因の第2位である。 2019年には174,650人の男性が前立腺癌と診断され、31,620人が本疾患で死亡すると推定されている」
[ 解説 ]
日本の2019年の男性癌罹患数予測では、前立腺癌罹患数は78,500人であり、大腸癌、胃癌、肺癌に次いで第4番目であった。 (国立研究開発法人 国立がん研究センター:がん対策情報センター:2019年のがん統計予測:がん情報総合サイト「がん情報サービス」)。
日本における2019年の男性癌死亡数予測によると、前立腺癌死亡数は12,600人であり、肺癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌、肝臓癌についで6番目に多い (国立研究開発法人 国立がん研究センター:がん対策情報センター:2019年のがん統計予測:がん情報総合サイト「がん情報サービス」)。
[検査に関する実際的な考慮事項] [検査の開始年齢][検査の頻度]
「当委員会の大半のメンバーは、45歳の時点で十分な情報を提供した上での検査を開始する方針が望ましいと考えている。PSA値が1.0ng/mL以上の男性では1〜2年間隔、 1.0ng/mL未満の男性では2〜4年間隔での再検査が推奨される。」
[ 解説 ]
日本泌尿器科学会の「前立腺がん検診ガイドライン:2018年版」では、 海外の50〜64歳を対象とした無作為化比較対照試験および50〜54歳を対象としたコホート研究において、PSA検診実施に伴う死亡率低下が証明されていることから、50歳からの 検診受診を推奨している。
また、費用対効果の観点からPSA基礎値が1.0ng/mL以下の受診者では3年後、1.1ng/mL〜カットオフ値の受診者では1年後の検診受診を推奨している。
[検査に関する実際的な考慮事項][検査の中止年齢]
「76歳以降のスクリーニングの継続は、徴候や症状が現れるまで放置すると重大なリスクとなる活動性の高い少数の癌を発見することを目的として、注意を払った上で、併存症がないかほとんどない健康状態が非常に良好な患者のみ(特にPSA検査を受けたことがない場合)を対象とするべきである(76歳以降のスクリーニングの継続はカテゴリー2B)。」
[ 解説 ]
日本では米国と比べてPSA検査曝露率が低いため、現時点では画一律的な年齢上限を設定することは困難である。 よって、暦年齢のみで検診受診を中止すべきではないが、今後、日常生活の独立度、栄養状態、合併症に照らし合わせた検診中止判断基準の構築が期待される。
[バイオマーカー検査:PSA関連検査とその他の検査] [年・ヲK層別および人種別PSA基準範囲]
「前立腺癌の早期発見においてこれらの年齢階層別および人種別のPSAカットオフ値が果たす正確な役割はいまだ不明である。 当委員会は、これらの範囲のルーチンの採用については何の推奨も示していない。」
[ 解説 ]
日本人においても、年齢階層別PSA基準値の有用性について確定的な証拠はない。 しかし、PSA値は年齢とともに上昇することが知られており、70未満の年齢層における前立腺癌診断の感度改善と適切な治療マネジメントを目的として 年齢階層別カットオフ値(50 歳〜 64 歳:3.0ng/mL 、 65 歳〜 69 歳:3.5ng/mL 、 70 歳以上:4.0ng/mL)が提案され、その有用性が示唆されている(前立腺がん検診ガイドライン:2018年版)。
[バイオマーカー検査:PSA関連検査とその他の検査] [PCA3]
「FDAは、過去に前立腺生検で陰性と判定された50歳以上の男性において 再生検が必要か否かを他の因子とともに決定する際の参考検査として、PCA3の測定を承認している。」
[解説]
日本では、臨床研究の段階で有用性を示唆する研究成果が出ているが、 体外診断薬としての臨床使用のめどは立っていない。 (Okihara K, Ochiai A, Kamoi K, et al. Comprehensive assessment for novel prostate cancer markers in the prostate-specific antigen era: focusing on Asians and Asian countries. Int J Urol. 2015; 22: :334-41.)
[バイオマーカー検査:PSA関連検査とその他の検査] [Prostate Health Index(PHI)]
「PHIは、血清PSA値が4〜10ng/mLの男性を対象として、2012年にFDAによる承認を受けた。」
[解説]
日本では、臨床研究の段階で有用性を示唆する研究成果が出ており (Ito K, Fujizuka Y, Ishikura K, Cook B. Next-generation prostate-specific antigen test: precursor form of prostate-specific antigen. Int J Clin Oncol. 2014; 19: 782-92.)、 体外診断薬申請へ向けた、[-2]proPSA関連インデックスの前立腺癌診断における有用性を検証する、 国内多施設共同研究(臨床試験登録:UMIN000016934)が進行中であるが、今後の承認のめどは未定である。
[バイオマーカー検査:PSA関連検査とその他の検査] [4Kscore®]
「当委員会のコンセンサスは、生検前の患者と過去に生検で陰性と判定されたが 臨床的に重要な前立腺癌のリスクが高いと考えられる患者では、この検査を考慮してもよいというものである。 ただし、4Kscoreは至適なカットオフ値が確立されていないことを患者と泌尿器科医が理解しておくことが重要である。 4Kscore検査を実施する場合は、患者と泌尿器科医は結果について話し合い、生検に進むかどうかを決定すべきである。」
[解説]
日本では、臨床研究の段階で有用性を示唆する研究成果が出ているが、 体外診断薬としての臨床使用のめどは立っていない。
[バイオマーカー検査:PSA関連検査とその他の検査] [ConfirmMDx]
「当委員会は、再生検で前立腺癌と診断されるリスクが高い個人をこの検査で同定できる可能性があることから、 再生検を検討している男性に対する選択肢としてConfirmMDxを考慮できると考えている。」
[解説]
日本では、臨床研究の段階で有用性を示唆する研究成果が出ているが、 体外診断薬としての臨床使用のめどは立っていない。
[生検の方法] [初回生検]
「系統的な経直腸的生検を施行する場合、当委員会は、少なくとも12カ所の多部位コア生検(辺縁部の内側および外側6カ所と異常部位を狙撃)の施行を推奨する。この多部位生検の方法に関しては妥当性の検証が済んでおり、6カ所生検法と比較して癌の検出率を向上させる。前立腺前方部への生検はルーチン生検での実施は支持されていない。しかし、PSAが持続的に上昇している場合には、多部位生検のプロトコルに移行域の生検を追加することを考慮してもよい。」
[ 解説 ]
日本では、経会陰的生検を実施している施設も多く、 その場合比較的容易に前立腺前方(腹側)の組織採取が可能である。前立腺の前方部のみに検出されるがんが多いことが報告されており ( Ito K, Ohi M, Yamamoto T, et al. The diagnostic accuracy of the age-adjusted and prostate volume-adjusted biopsy method in males with PSA levels of 4.1 to 10.0 ng/ml. Cancer. 2002; 95: 2112-2119.)、 経会陰的生検では初回生検より、前立腺前方への生検を行うことも多い。
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