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◎ 前立腺がん | ![]() |
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この NCCN ガイドライン日本語版「前立腺癌」の翻訳は、野々村祝夫(大阪大学)が監修した。 日本泌尿器科学会は、わが国における前立腺癌診療について「前立腺癌診療ガイドライン」を出版している。日本泌尿器科学会のガイドラインは、 日本人を対象とした EBM に基づくガイドライン を作成することを目的として、利用者の立場から Q&A 形式 を とグレード化を取り入れ、泌尿器科以外の先生方にも活用していただける実践的なガイドラインである。一方、ヨーロッパ泌尿器科学会( EAU )のガイドライン同様、今回、日本語版の監修に携わった NCCN ガイドラインは、最新の研究内容を取り入れ随時アップデートされた米国における前立腺癌治療についての詳細な治療ストラテジーを提案している有用なガイドラインである。 本ガイドラインに記載されている内容は、米国における医療の現状を背景としており、医療保険体制や治療手技に対する保険適応の異なる本邦の現状では、必ずしも現実的ではない側面があることに留意する必要がある。 本邦においても前立腺癌の罹患率の増加は目覚ましく、2015年の短期予測では男性がんの1位を占めるに至っている。このような状況においても米国における PSA スクリーニングの普及、言い換えれば PSA 暴露率は本邦のそれとはかなり解離があるのが現状であり、診断時に転移を有する、または局所進行癌で発見される症例も本邦においては依然多いのが現状である。治療選択について、超低リスク群および低リスク群に対する Active surveillance に関しても、本邦でも普及しつつあるとは言え、米国における実施状況とは異なっている。また、日本では保険外治療となっている診断法や治療法もあり注意が必要である。以下に気づいた相違点を列記する。
一方、国民皆保険の本邦では、適応のある治療法に関しては平等に治療を受けられる点が特徴として挙げられる。本ガイドライン中には、期待余命とリスク分類による治療選択が呈示されているが、米国の平均寿命および期待余命は本邦のそれとは異なっており、比較的高齢の患者でも期待余命は長い場合における根治治療の選択では、本邦症例独自の判断が必要となる。また、ガイドライン中において臨床試験への参加を奨めるという選択肢に関しても 、 米国に比べて臨床試験が十分に普及していない本邦では、国民の臨床試験に対する認識も低く、現実的な選択肢とは言えない。 本ガイドラインを本邦で適応するには、これらの状況を考慮に入れた上で参考にすることが望ましい。 |
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(文責:一般社団法人 日本泌尿器科学会 ) | |
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【和訳文について】 和訳文の作成にあたっては原文に忠実な翻訳を原則としたが、日米の表現法の相違、用語の定義の相違などのために、直訳では誤解を生じる恐れがあるものについては、日本語として適切に判断される表現に置き換えた。 訳出例 Active surveillance [ 説明 ] 日本ではPSA監視療法と訳している場合も多いが2016年の本邦での前立腺癌診療ガイドラインでは「監視療法」となっている。いずれも内容的には同じ治療法を意味している。 |
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