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◎ 腎がん | ![]() |
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この NCCN ガイドライン日本語版「腎がん」の翻訳は、江藤正俊/武内在雄(九州大学)が監修した 日本泌尿器科学会は、本邦 における腎癌の最適な診療の普及と均てん化を目的に「腎癌診療ガイドライン」を出版している。日本泌尿器科学会のガイドラインは作成委員会が提案・作成した臨床的な疑問 (CQ) に対して「根拠に基づいた医療 (EBM) 」の手順に基づいて答える形式を採用した日常診療に役立つ実践的なガイドラインである。一方、今回、日本語版の監修に携わった NCCN ガイドラインは、最新の研究内容を取り入れ随時改定されており、米国における腎癌診療についての詳細な治療戦略を提案している有用なガイドラインである。 しかし、NCCNガイドラインに記載されている内容については、背景となる医療制度や医療事情の日米における相違を理解する必要があり、日本における臨床において必ずしも現実的でない側面があることに留意する必要がある。 本ガイドラインでは、小径腎癌に対する経皮的局所療法としてのラジオ波焼灼術と凍結療法が推奨されている。本邦 において、ラジオ波焼灼術は2008 年に先進医療技術として認可されたが、2013年11月1日に終了し、現在は保険収載されていない。一方、凍結療法は2011年6月に保険収載された。 分子標的薬に関しては日米間に相違があり、本邦においては、本ガイドラインで進行症例に対する選択肢として推奨されているチロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブが2008 年 4 月に、スニチニブは同年7月に、アキシチニブは2012年8月に、パゾパニブは2013年3月に発売開始され、2020年3月にカボザンチニブが適応拡大された。さらに mTOR 阻害剤であるエベロリムスは2010年4月、テムシロリムスは同年9月、カボザンチニブは2020年3月に発売開始されている。また、同じく本ガイドラインで推奨されているベバシズマブ、レンバチニブ、エルロチニブは未だ本邦においては、腎癌に対する適応はない。免疫チェックポイント阻害薬に関して本邦では、2016年8月に根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する二次治療以降の治療としてニボルマブが、2018年8月に化学療法未治療の中および高リスク進行腎細胞癌に対してイピリムマブとニボルマブの併用療法が発売開始され、2019年12月に根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する治療薬に対してペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法、アベルマブとアキシチニブの併用療法が適応拡大された。尚、本ガイドラインの治療選択肢として挙げられている高用量インターロイキン(IL-2)による治療は、本邦において一般的でない。 本ガイドラインを本邦で適応するには、これらの状況を理解した上で参考にすることが望ましい。 |
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(文責:一般社団法人日本泌尿器科学会) | |
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