NCCNガイドラインコメント
◎原発不明がん close

このNCCNガイドライン『原発不明がん』(2019年第 2版)の翻訳は、日本臨床腫瘍学会原発不明がん診療ガイドライン部会のメンバーが監修した。

 日本臨床腫瘍学会では、原発不明がん診療ガイドラインを2010年に初版発行し、2018年に改訂版を出しているが、このガイドラインは我が国における原発不明がんに対する最適な診断・治療の普及と均てん化を目的として、クリニカルクエスションに対して回答するという方法で作成されてきた。一方こちらのNCCNガイドラインでは、臨床所見、病理検査結果等に基づき診断から治療まで誘導されるディシジョンツリー方式を採用している。この二つのガイドラインをお互いに補完することで原発不明がんの診療に役立てていただければ幸いである。

 我が国の保険診療上、原発不明がんなる保険病名は存在しないため、原発不明がんのNCCNガイドラインに記載されている薬物療法の選択肢の多くはいずれも本邦では保険承認はなされていない。しかし今回の改訂では、近年のゲノム医療の発展によりがん種横断的にみられるドライバー変異であるNTRK融合遺伝子や、これもまたがん種横断的にみられる腫瘍の特徴であるマイクロサテライト不安定性なども取り上げられ、その特徴を標的とした新しい治療戦略についても言及されている。
 これからもゲノム医療の進歩に伴う新たな原発巣の診断法や遺伝子変異に基づく治療法が明らかにされてくることが期待されるが、今回もNCCNのガイドラインでも言及されているように、臨床試験への積極的な参加によってこそ、新たなエビデンスが得られるものであるため日常診療においても検討されることが望ましい。

 翻訳に際して「原文に忠実に翻訳」を原則としたが、直訳では誤解を生じる恐れがあるものについては日本語訳として適切に判断できるよう心掛けた。
 翻訳内容は十分に吟味したが、翻訳に関する問題点があればご指摘いただければ幸いである。

2020年4月17日
文責 日本臨床腫瘍学会 原発不明がん診療ガイドライン部会
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