NCCNガイドラインコメント
◎小細胞肺がん close
NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン2018年版(小細胞肺癌)監訳に際して

 NCCN2018年版の小細胞肺癌が発行されたが、2017年版からの主たる改訂点として、本邦で検証された試験をもとに進展型SCLC患者に対する奏効後の予防的全脳照射(PCI)の推奨が「PCIを考慮する」に下げられた点である。そのため、PCIを受けない症例を対象として「サーベイランス」の項が改訂され、「PCIが未実施であれば、脳のMRI(望ましい)または造影CTを1〜2年目は3〜4ヵ月毎」との記載が追記された。一方で、限局型SCLC患者に対する奏効後のPCIは、カテゴリー1で変わらず推奨されている。

 今回の改訂において、SCLCに対する新規薬剤の登場はなかった。薬剤選択で注意する点として、二次治療以降の全身化学療法レジメンにおいては、タキサン系、テモゾロミド、ニボルマブ±イピリムマブ、ビノレルビン、経口エトポシド、ゲムシタビンがカテゴリー2Aで推奨されているが、いずれも日本で保険承認されていないレジメンであり、その点に留意して本NCCNガイドラインをご活用いただきたい。

 再発小細胞肺癌は、「日本肺癌学会肺癌診療ガイドライン」では、Sensitive relapse: 初回治療終了から再発までの期間が60〜90日以上、Refractory relapse: それ以外、「 NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン」では、再発までの期間が6ヵ月以下とそれ以外で分類され、両者で定義が異なることに注意が必要である。また、「 NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン」では、再発までの期間が6ヵ月を超える場合には初回化学療法が推奨されているが、この根拠となっているのは1980年代の古い論文である。このような対象に初回化学療法が推奨されるかどうかは再度検証する必要があると思われる。
2018年2月吉日
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