NCCNガイドラインコメント
◎悪性胸膜中皮腫 close
NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン2019年第2版監訳に際して
この NCCN ガイドライン「悪性胸膜中皮腫」(2019年第 2 版)の翻訳は、日本肺癌学会が監訳した。

今回のNCCNガイドライン改訂では、2つの点で大きな変化があった。

1つは、前回更新時のstage分類の変更(進行症例の細分化)に伴い、今回の更新では臨床病期I〜IIIA期のMPM患者に手術を考慮することが推奨され、IIIB期またはIV期のMPM患者には組織型に関係なく手術が選択肢とならないことが明記されるようになったことである。

もう1つは、試験データの増加に伴い、二次以降の治療におけるニボルマブ±イピリムマブの推奨度をカテゴリー2Bから2Aに変更したことである。エビデンスはまだ多くないが、MPMの全身治療が今後大きく変わってゆくことを予感させるものである。

日本では、胸水ヒアルロン酸測定がしばしば行われるのに対し、縦隔鏡検査はあまり行われないなど、日米間の診療背景に多少の差異が見られる。また、P/D後の片側胸郭に対するIMRTについては、日本人の安全性は検討されていないため注意が必要かもしれない。

NCCNガイドラインを参考にすると同時に、日本肺癌学会では悪性胸膜中皮腫に対する診療ガイドライン2020年版の改定作業を現在行っているため、公開時にはそちらも参考にしていただきたい。
2020年5月18日
 
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