NCCNガイドラインコメント
◎非ホジキンリンパ腫 close
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※概要(OVERVIEW)、病期分類(ST)、B細胞受容体阻害薬(ibrutinibおよびidelalisib)の使用に関して考慮すべき事項(NHODG-E)のコメントは共通です。
この NCCN ガイドライン日本語版「非ホジキンリンパ腫」は、日本血液学会 造血器腫瘍ガイドライン作成委員会が監訳・監修した。
◎冒頭部分
(INTRO)

コメントなし
◎概要
◎病期分類
◎B細胞受容体阻害薬(ibrutinibおよびidelalisib)の使用に関して考慮すべき事項
(OVERVIEW, ST, NHODG-E)

当ガイドラインでは非ホジキンリンパ腫の疫学、分類、代表的な病型の説明、治療効果判定、診断手順、診断時および再評価時に施行すべき精査、治療に起因するウィルス感染症とその予防方法、腫瘍崩壊症候群とその予防および治療方法などに関する推奨が記載されている。基本的には日本での日常診療にも適用できる有用な内容である。

本ガイドラインは2013年第2版を翻訳しているため、最近報告された、FDG-PET/CTを積極的に組み込んだ新しい病期判定および効果判定規準(Lugano規準) [J Clin Oncol. 2014; 32: 3059-3067.] の記述はない。また、rituximab併用化学療法を施行したB細胞リンパ腫を対象として、B型肝炎の再活性化を予防するためのHBV-DNAモニタリングに関する国内多施設共同前方視的研究 [Clin Infect Dis. 2015] も引用されていない。

非ホジキンリンパ腫の分類、診断、病期判定規準、効果判定規準は時代とともに改訂されている。また、様々な新規薬剤や新規治療の開発によって標準治療が置き換わる可能性があり、それに伴って治療に起因する合併症や推奨される支持療法が変わる可能性がある。したがって、リンパ腫の診療に携わる医療関係者は常に新しい情報を注視することが勧められる。

◎慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
(CSLL)

慢性リンパ性白血病は、欧米では最多の造血器腫瘍であり、また研究、薬剤の開発も進歩の早い。NCCNガイドラインには本邦では未承認薬また適応外薬が多く含まれており、それらに対して付記していますが、新たに認可されたりすることがありますので、確認をしてください。診断や予後に関係する重要な因子として、免疫グロブリン重鎖遺伝子(IGVH)体細胞変異検査があり、欧米では普通にされる検査ですが、本邦では保険未承認の検査で、また実施は極めて困難です。またFISH検査も必須検査として位置付けられていますが、本邦の保険診療では一度に1種類しか提出できないなどの制約があり、欧米での標準的な医療が本邦では実施困難であることに留意ください。アレムツズマブは、米国ではもはや市販されていないがと記載されていますが、本邦では2014年9月26日に製造販売承認され、 2015年1月15日に発売されている。また明らかに誤記の箇所があり、訂正した箇所があります。
◎濾胞性リンパ腫
(FOLL)

NCCNガイドラインでは、Grade 3aおよび3bのFL症例は、一般的にDLBCLの治療推奨に従って治療されると記載されているが、日本を含む米国以外の国々ではgrade 3aはFL、grade 3bをDLBCLの治療推奨に従って治療されることが多い。
病理組織学的にGrade 1, 2と3aとの区別は再現性が低いとされているが、t(14;18)転座の頻度など、いくつかの生物学的な特徴はGrade 1, 2, 3aと3bとで異なっている。

FLに対する推奨レジメンで用いられている薬剤のうち、以下は国内未承認である。
・未治療FLに対するbendamustine、放射免疫療法(ibritumomab tiuxetan)
・FL初回治療後の地固め療法としての放射免疫療法(ibritumomab tiuxetan)
・FLに対するlenalidomide (FLが適応症でない), chlorambucil (薬剤が国内未承認), idelalisib (薬剤が国内未承認)

◎辺縁帯リンパ腫
(MZL)

NCCNガイドラインでは,脾MZLでのHCVウイルスの関与が取り上げているが,日本でのデータの報告はない。さらに治療に関して,IFNはHCV感染に対して使用可能ではあるがMZLに対する効果を見た報告はない。
◎マントル細胞リンパ腫
(MANT)

マントル細胞リンパ腫(MCL)は、わが国では非ホジキンリンパ腫の約3%を占める比較的頻度の低い病型である。従来わが国で実施されたMCLの治療研究はほとんどなく、欧米においても第V相試験は少なく各試験の症例数も限られている。NCCNガイドラインではコンセンサス委員会が欧米で実施された臨床試験を詳細に検討し、エビデンスに基づいた治療指針を提示している。日本血液学会編の「造血器腫瘍診療ガイドイン」も欧米のエビデンスに基づいて作成された。
NCCNガイドラインに一次治療のaggressive therapyとして推奨されている治療法は、いずれもわが国で実施が可能である。less aggressive therapyとして推奨されているボルテゾミブとリツキシマブ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、prednisoneとの併用(VR-CAP療法)も、ボルテゾミブが2015年6月に初発MCLに対し保険承認され実施が可能となった。また、一次治療のHDT/ASCT非適応例の地固め療法として、リツキシマブ維持療法(8週毎に12回まで)も2015年5月に保険承認されている。65歳以下では、第一奏効期の地固め療法としてHDT/ASCTが推奨されているが、NCCNガイドラインに記載されているように、HDT/ASCTとリツキシマブ維持療法とを直接比較する試験はなされていない。二次治療として推奨される治療では、わが国では lenalidomideを除けば実施が可能である。しかし、二次治療におけるボルテゾミブの位置づけは、併用薬も含めさら更に検討が必要である。また、MCLの一部はindolentな臨床経過を呈することが知られており(indolent MCL)、高齢でindolentな経過を呈する症例は慎重な観察下での無治療も選択肢となりうるが、indolent MCLを正しく診断する方法は確立しておらず、適用には慎重な配慮が必要である。

MCLの治療に関するエビデンスの蓄積は未だ十分ではなく、標準治療は確立していない。一方、有望な新規治療薬の開発も続いており、一次治療と二次治療、aggressive therapyとless aggressive therapyにおいて、より有効な標準治療の確立のためには積極的な臨床試験への登録が望まれる。

◎びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
(BCEL)

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫は、本邦でも欧米同様に全悪性リンパ腫の約3〜4割を占める、非ホジキンリンパ腫の最多の病型である。病態に明らかな人種差はないため、海外のエビデンスも多く盛り込んだ日本血液学会編の「造血器腫瘍診療ガイドライン」と、本NCCNガイドラインの間に大きな差異はなく、概ね日常診療で利用可能である。

両者の違いとしては、まず推奨される薬剤がある。二次治療としてベンダムスチン、ブレンツキシマブ・ベドチン、オキザリプラチン、レナリドマイドなどが挙げられているが、本邦ではこれらの薬剤はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対しては適応承認がない事には留意する必要がある。また、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫とグレーゾーンリンパ腫についての記述がある。造血器腫瘍診療ガイドラインではこの2つの病型については、別個で記載されていない。しかしNCCNガイドラインでもこれらの治療については議論のあるものであるとされており、内容をそのまま日常診療に適応するには慎重を要するが、大いに参考になるものである。

◎バーキットリンパ腫
(BURK)

より強力な化学療法が必要なリンパ腫である。腫瘍細胞はCD20陽性であるが、リツキシマブの役割は、他のB細胞リンパ腫ほど明らかではない。リツキシマブ追加の効果はレジメンにより様々であり、治療強度が比較的弱いDA-EPOCH療法などでは、リツキシマブ併用の有効性が報告されているが、もっとも強力なレジメンの一つであるCODOX-M/IVAC療法では、有害事象も増強するため現段階でリツキシマブ併用の有効性は明らかではない。今後の報告が待たれる。

腫瘍量が多く、化学療法に対する感受性が高いため、腫瘍崩壊症候群のリスクはきわめて高い。十分な補液と尿酸分解酵素薬による積極的な尿酸コントロールに加え、リンのコントロールがより重要になる。

◎リンパ芽球性リンパ腫
(BLAST)

WHO分類で前駆リンパ球性腫瘍に分類されるリンパ芽球性白血病/リンパ腫をNCCNガイドラインでは非ホジキンリンパ腫の一項目にも記載しているが、記載は診断に関する事項にとどめており、治療に関しては、急性リンパ性白血病に纏められている。
リンパ芽球性白血病とリンパ腫の生物学的背景は同一と考えられており、初診時に白血化しておらず、リンパ節を含めた腫瘤病変が主体であるものをリンパ芽球性リンパ腫、骨髄、末梢血に多くの腫瘍細胞を認めるものをリンパ芽球性白血病と診断している。本ガイドラインでは明確には記載されていないが、WHO分類第4版では、白血病と診断する骨髄の芽球の割合の境界として25%を記載している。また、20%未満の場合には、白血病の診断は避けた方がよいとも記載されている。
◎AIDS関連B細胞リンパ腫
(AIDS)

HIV関連リンパ腫については、日本エイズ学会よりHIV関連悪性リンパ腫 治療の手引きVer 2.0が2013年に参考資料として公表されている。NCCNガイドライン他を参考に作成されたものであるが、併せて参考になるかと考えられる。
◎有毛細胞白血病
(HCL)

本邦での発症頻度はCLLの1/10程度で、極めてまれな疾患である。BRAF遺伝子のV600E変異検査は、保険適応外である。また本邦においてもvemurafenibはBRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫に保険承認されているが、HCLに対しては適応外である。
◎原発性皮膚B細胞リンパ腫
(CUTB)

原発性皮膚B細胞リンパ腫については、日本皮膚科学会による皮膚リンパ腫診療ガイドラインにて取り上げられており、併せて参考にされたい。原発性皮膚濾胞中心リンパ腫については自然消退が観察されることもあり、経過観察も選択肢の1つとなる。
◎末梢性T細胞リンパ腫
(TCEL)

NCCNガイドラインではALK陽性ALCL以外のPTCLで初回治療によりCRとなった場合に大量化学療法を考慮すると記載されているが、この判断を支持するエビデンスは乏しく、日本血液学会のガイドラインでは含められていない。
◎菌状息肉腫/セザリー症候群
(MFSS)

菌状息肉腫/セザリー症候群は、欧米白人では比較的多い疾患であるが本邦では少ない疾患である。他の皮膚リンパ腫と同様、ほとんど皮膚科で診断され、特に菌状息肉症では初期治療は皮膚科でなされることが多い。経過は緩徐なものから比較的早く進行するものまで様々であるが、治療困難になると血液内科に紹介される傾向にある。病初期からの状態把握は必須で、長い疾患経過のどの時期に患者があるのかを把握することが重要である。大細胞変異の存在に注意する必要はあるが、どの時期にあるかは病理組織学的検査のみでは決定できないので、臨床家が総合的に判断する必要がある。本邦での治療経験は少ないことから、欧米の治療方針やガイドラインが参考になる。

治療の観点からは、欧米で承認されているレチノイド、ベキサロテン(タルグレチン®)が未発売なので限界があるが、同薬は既に保険承認申請されており間もなく発売されると思われる。Isotretinoin [13-cis-retinoic acid], acitretinといったレチノイドも本邦では未承認である。他には、葉酸代謝拮抗剤pralatrexate、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤romidepsine、ナイトロジェンマスタードmechlorethamineが本邦では保険承認されていない。PUVAによる光線療法も保険承認されていない他、全身電子線照射治療ができる施設も限られているため、治療に限界のある領域である。今後の本邦での保険承認の拡大が期待される。

◎原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症
(PCTLD)

原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症は、皮膚原発未分化大細胞リンパ腫(PC-ALCL)、リンパ腫様丘疹症(LyP)を代表とする疾患群である。全身性ALCLとの類似性から以前より一定の特徴があるとされてきたが、皮膚リンパ腫から独立した章立てとされているのは、トキシン結合CD30抗体であるブレンツキシマブベドチンが臨床導入されている影響が大きい。

原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖異常症自体は稀な疾患で、本邦ではほとんど皮膚科で診断される。緩徐な経過をたどるので皮膚科でそのままフォローされていることが多く、治療困難になってから血液内科に紹介されることが多い。疾患重複があることから、紹介時には全身性ALCLおよび皮膚T細胞リンパ腫のCD30陽性大細胞型形質転換の可能性を再度考慮して鑑別する必要がある。この鑑別は病理組織学的診断のみでは不可能なので、臨床医が総合的に判断する必要がある。

治療の観点からは、欧米で承認されているレチノイド、ベキサロテン(タルグレチン®)が未発売なので限界があるが、同薬は既に保険承認申請されており間もなく発売されると思われる。他には、葉酸代謝拮抗剤pralatrexateや、ナイトロジェンマスタードmechlorethamineが本邦では保険承認されていない。PUVAによる光線療法も 保険承認されていない他、全身電子線照射治療ができる施設も限られているため、治療に限界のある領域である。今後の本邦での保険承認の拡大が期待される。

◎T細胞大顆粒リンパ球性白血病
(LGLL)

T細胞大顆粒リンパ球性白血病は稀な成熟T細胞白血病で、緩徐な経過をたどる。発症は少ないが、生命予後は極めて良好なので、フォローされている患者数は比較的多くなる。極めて予後不良なアグレッシブNK細胞白血病や、T細胞リンパ腫の白血化、特に白血化肝脾T細胞リンパ腫との鑑別が特に重要である。

治療の観点からは、最近CD52抗体製剤アレムツズマブ(マブキャンパス®)が最近承認されたので、欧米との格差はなくなった。同薬はむしろ現在、欧米で入手困難である。ただしこの薬は有害事象も多く、治療困難な状態になってから使う薬剤であるので注意が必要である。

◎成人T細胞白血病/リンパ腫
(ATLL)

成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma; ATL)についての NCCNガイドラインは、2009年にJCOに掲載されたATL consensus meetingのレポート (日本を含む7か国からの研究者による)も参照して、診断・病型分類法と病型分類 による層別化した治療法選択、効果判定法などが詳述されている。ただ診断法、病型 分類などその記載の一部には誤謬があったので、監訳では修正するとともに、先端医 療振興財団よりNCCNへ適宜確認を行っていただいている。また米国では日本と比べて 本疾患が希少であることから、その診療実態と使用できる薬剤に差異があることには 注意を要する。日本の造血器診療ガイドライン2013年版で記載されている初発のアグ レッシブATLに対するmLSG15療法で用いられるVindesineとRanimustineと再発難治の ATLに対するMogamulizmabが米国では使用できないことなどから記載がないこと、欧 米では白血化したATLに対する標準治療みなされNCCNガイドラインにも記載がある IFN/AZT療法のエビデンスレベルは決して高くないので、日本のガイドラインでは未 だ標準治療ではないと位置づけていることなどがあげられる。
◎T細胞前リンパ性白血病
(TPLL)

本邦においてもT-PLLはまれな疾患であるが、慢性リンパ性白血病(CLL)の発症頻度が欧米の1/4〜1/5であるのに対して、T-PLLは欧米の5〜6倍の頻度との報告がある(Tamura K, et al. Eur J Haematol 2001; 67: 152)。Alemtuzumabは、本邦では現在再発または難治性CLLに承認されており、T-PLLに対しては適応外である。「日本における造血細胞移植平成26年度全国調査報告書」によると、1999〜2013年の間に同種移植が行われたT-PLL症例は17例と極めて少なく、本邦における治療成績の評価は十分になされていない。
◎節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型
(NKTL)

鼻限局例の初回治療に対する記載が大きく異なっている。NCCNガイドラインでは、鼻限局期の初回治療として臨床試験・同時併用化学放射線療法・逐次的化学放射線療法の3つを挙げており、さらにNK-PIのlow risk例では放射線療法単独を挙げている。一方で、日本血液学会のガイドラインでは国内臨床試験の結果に基づいて、RT-2/3DeVIC療法をリスク因子にかかわらず推奨している。NCCNガイドラインの「候補となる(望ましい)治療レジメン」の項にあるCCRT-VIPD療法 (Kim SJ, et al. J Clin Oncol 2009;27:6027-32)は、感染症による治療関連死亡 (7%)の出現と長期観察データ不足の点から、実施は勧められない。
◎移植後リンパ増殖性疾患
(PTLD)

移植後リンパ増殖性疾患については、造血器腫瘍診療ガイドラインにおいても取り上げられていないため、当ガイドラインの記載は実地臨床においても非常に参考になる。当ガイドラインにも取り上げられているEBV-CTLを用いた養子免疫療法は、本邦においても臨床試験として開始されている。
◎キャッスルマン病
(CD)

キャッスルマン病は、NCCNガイドライン非ホジキンリンパ腫に最近加えられた項目で、増殖したBリンパ球がインターロイキン-6(IL-6)を過剰に分泌し、されさまざまな症状を呈するリンパ増殖性疾患である。本邦における陽性率は低いとの報告があるが、一部の症例ではHHV-8が関与しているおり、血清中HHV-8測定ができれば、診断や病勢の判定にも有用である。また、NCCNガイドラインはHHV-8感染の有無で、治療を層別しているが、本邦では保険適応がない。

NCCNガイドラインで推奨されている薬剤の一部には適応がないものがあり、注意が必要である。

◎成熟B細胞と成熟NK/T細胞腫瘍の鑑別診断における免疫表現型検査/遺伝子検査の利用
(NHODG_A)

組織型の確定のために病理組織像を加えた免疫表現型検査/遺伝子検査について詳細に記載されており、臨床医が適切に鑑別診断を行うことが可能となりえる。WMの診断に重要となるMYD88遺伝子変異(MYD88(L265P))検査は、わが国では保険適用がなく実地臨床では難しいと思われる。
◎NHLにおける支持療法
(NHODG_B)

腫瘍崩壊症候群に対する支持療法の記載は、ハイリスク因子やアロプリノールの投与期間およびラスブリカーゼの適応が明記され、簡潔でわかりやすい内容になっている。

B型肝炎ウイルス再活性化対策については、日本のガイドライン(日本肝臓学会)とは異なる部分も散見されるものの、HBs抗原陽性例に対する抗ウイルス薬予防投与および既往感染例(HBs抗原陰性かつHBコア抗体陽性)に対する定期的なHBV-DNAモニタリング(予防投与も選択肢)が明記され、最新のエビデンスに基づく内容となっている。モニタリングの間隔が、リンパ腫治療後は3ヶ月おきとなっているが、日本のガイドラインに従い、治療後少なくとも1年間は1ヶ月ごとに行うのが推奨される。また、ワクチン接種歴のない、HBs抗体単独陽性例(HBs抗原陰性かつHBコア抗体陰性)については言及されていないが、既往感染例として対策を講じることが望ましい。

また、C型肝炎ウイルス再活性化のエビデンスは十分ではないが、リンパ腫治療中のHCV-RNAモニタリングの必要性について言及されている。

◎非ホジキンリンパ腫のLugano治療効果判定基準
(NHODG_C)

効果判定規準は「Revised response criteria」 (J Clin Oncol2007;25:579-86)から「ルガノ分類」 (J Clin Oncol 2014;32:3059-67)へと改訂された。
◎放射線療法の原則
(NHODG_D)

悪性リンパ腫の長期生存者が増加するにつれて、放射線治療は局所制御に貢献するものの、遅発性放射線毒性が問題となっている。強度変調放射線治療や画像誘導放射線治療など最新放射線治療技術を用いたInvolved Site Radiation Therapy (ISRT)を行うことによって、局所制御率を維持しつつ遅発性放射線毒性を少なくし長期生存に貢献できないかと期待されている。本邦でも最新放射線治療技術が普及しつつある。
(文責:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会)
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