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◎多発性骨髄腫 | ![]() |
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この NCCN ガイドライン日本語版「多発性骨髄腫」は、日本血液学会 造血器腫瘍ガイドライン作成委員会が監訳・監修した。 多発性骨髄腫診療 日米における診療ガイドラインの違いについて 多発性骨髄腫患者に対する診療指針の概要については、NCCNガイドラインversion 2. 2014と日本血液学会による造血器腫瘍診療ガイドラインを比較しても、日米で大きな差異は認められない。ただし、ガイドライン作成委員間でのコンセンサス形成のための基本原則が医療保険制度を異にする日米間では同一ではないこと、承認薬剤の違いと我が国における新規薬剤の臨床開発の遅れ(ドラッグ・ラグ)に起因する治療選択の幅の違い、そして同じ薬剤であっても有害事象のプロファイルや至適投与量に違いがあることは事実である。 最初に、日米で共通した治療原則について述べる。両ガイドラインにおいても臓器障害を有する症候性(活動型)骨髄腫を全身化学療法の対象としている。進展高リスク群に相当する無症候性骨髄腫患者に対する治療介入に関しては、現時点では臨床試験での範疇にとどめている。これは国際的に認められた進展高リスク群の規準が存在しないこと、そして高リスク群と称される無症候性骨髄腫の中にはMRI/PET検査などで精査をすれば症候性骨髄腫に相当する患者が含まれている可能性が大きいからである。第二に症候性骨髄腫患者は、移植適応と非適応に分けて初期治療を決定する戦略である。新規薬剤登場後も大量メルファラン療法による深い奏効と無増悪生存期間の延長による初期治療後のQOL改善効果は揺るがないものであり、新規薬剤との併用で高い治療効果を得ることに重点を置いている。移植適応患者に対する寛解導入療法としては、我が国では薬事承認され、且つ迅速な効果が得られるボルテゾミブ含有レジメンが主体である。米国においても同様であるが、未治療患者に対してサリドマイドが承認されていること、未治療例への薬事承認は成されていないもののレナリドミドも保険制度下で使用可能なことから米国では様々なレジメンがカテゴリー1として記載されている。同様に移植非適応患者に対する寛解導入療法については、我が国では推奨レジメンの中で、唯一MPB療法が薬事承認下で実施可能である。米国においては、同様の理由からMPコンボレジメン(MPT, MPB, MPL)に加えてLd療法もカテゴリー1として記載されている。 次に、日米のガイドラインで異なる立場をとっているのは維持療法の記載である。我が国においては推奨できる維持療法として、リスクと費用に見合うだけの生存期間の延長が認められることを条件としているが、米国においては無増悪生存期間の延長効果を推奨の条件としていることに起因する。欧米各国においても初期治療後の維持療法として承認された薬剤は存在せず、至適投与法も未確立である。その中でNCCNガイドラインでは、サリドマイドとレナリドミドによる維持療法をカテゴリー1として記載している。ただし、維持療法を実施することによる恩恵と二次がん発症を含むリスクについて患者と十分に話し合った上で実施するかどうかを決定すること、と条件付けて記載されている。今後は維持療法により恩恵を受けられる病型と無治療経過観察で長期の無増悪生存期間が得られる病型の違いを明らかにしてゆくことが重要であろう。第二の違いは、米国ではサルベージ(救援)療法における治療レジメンの選択肢の幅が広いことである。勿論、カテゴリー1として高いエビデンスレベルで推奨されているレジメンは日米間で大きな差は無い。しかし、カテゴリー2A相当のレジメンにカーフィルゾミブ、ポマリドミド、ペグリポソーマル・ドキソルビシン、ベンダムスチン、ボリノスタットなどの新規薬剤を含有するレジメンの記載がある。我が国においては、何れも未承認薬あるいは適応外薬に相当する。国際第III相治験に参加して開発中の新規薬剤も含めて有効な薬剤に関しては早期承認を得るための臨床治験の迅速化が重要課題である。 もう一点違いを述べるとすれば、米国においては新規薬剤を含む様々な併用療法の第I/II相臨床試験が実施され、推奨用量と効果の概要が示されている。我が国では、承認薬間の併用であっても日本人における至適投与量の決定が成され安心して使用できる併用療法が少ない。民族差に基づく薬物動態や有害事象の違いなどから、欧米人の推奨用量をそのまま用いることが危険な場合もあるため、我が国においても医師主導の臨床試験を活発に実施して安心して使用できるレジメンを確立してゆく必要がある。 |
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(文責:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会) | |
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