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◎骨髄増殖因子 | ![]() |
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この NCCN ガイドライン日本語版「骨髄増殖因子」は、日本癌治療学会 G-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループが監訳・監修した。 わが国の日本癌治療学会の作成したG-CSF適正使用ガイドライン(以下2013年度版)とこの度改訂された全米総合がん情報ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network: NCCN)におけるG-CSF使用のガイドライン(以下NCCN2013)の基本コンセプトはほぼ同様である。 2013年度版は,初版と同様に米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology: ASCO)の改訂G-CSF使用のガイドライン(2006)を参照し,2次資料としてがん品質の研究と治療のための欧州機関(European Organisation for Research and Treatment of Cancer: EORTC)(2010),NCCN2012も参照している。 相違点をあげるとすれば,NCCN2013では,疾患毎に欧米で行われた臨床試験における化学療法レジメンの発熱性好中球減少症(febrile neutropenia: FN)の頻度,米国食品医薬研究局(Food and Drug Administration: FDA)の認めたG-CSFの用法,用量が示されているが,2013年度版はわが国で行われた臨床試験(治療用法,用量が異なることもある)の結果が可能な限り採用され,わが国の保険診療で許されるG-CSFの用法,用量,適応症が記載されている。従って,現時点ではわが国での保険診療の認められていないペグフィルグラスチムに関しては,予防的投与における一般的な記載はあるが,具体的記載はされていない。逆に,欧州と日本で認められているバイオシミラー(biosimilar)の承認制度が米国にはまだないため,NCCN2013では新規生物学的製剤の一つとしてTboフィルグラスチム(Teva社)をカテゴリー1と記載している。2013年度版ではバイオシミラーの項目をたて検討を行っているが,わが国での日本人に対するエビデンスは不十分として,欧米では十分な資料のあるTeva社製を含めバイオシミラー全体でC1と判定している。 G-CSFの一次予防的投与に際しては,NCCN2013, 2013年度版 両ガイドラインともに患者個人のFNのリスクを評価し,化学療法のレジメンの有するFNの頻度でG-CSFの予防的投与の適否が決定されている。NCCN2013の本文では更に,患者個人のFNのリスク要因に関する詳細な検討結果が記載されており,是非参考にされるべきと思われる。わが国の保険診療で行われている白血球数あるいは好中球数を見ながら,高度好中球数減少,発熱,FN発症前にG-CSFの適否を検討する投与方法は,FNを予測する前向き試験があれば,ある意味で優れた一次予防的投与と言えるのかもしれない(定義上は好中球減少を確認しての投与であればG-CSFによる治療となる)。 今回のNCCN2013では造血幹細胞移植の記載が本文に追加されている。CXCR4(C-X-C chemokine receptor-4)阻害薬であるplerixaforのchemo-mobilizationレジメンへの追加効果や,移植後のペグフィルグラスチムの有効性などが記載されているが,わが国の保険診療として使用することができず,2013年度版では記載していない。NCCN2013ではG-CSFの投与を必要とする重症慢性好中球減少症についても記述されているが,2013年度版ではがん治療に関連したG-CSFの使用に限定した記載としたため,非がん疾患におけるG-CSFの使用については言及していない。 NCCN2013は優れたガイドラインであるが,すべて欧米の臨床試験のエビデンスと委員会のコンセンサスに基づいて記載されている。実際に,G-CSFを使用される際にはわが国の最新のガイドラインも必ず参照(Web上では毎年更新予定)して頂きたい。 |
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(文責:日本癌治療学会 G-CSF適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ) | |
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