NCCNガイドラインコメント
◎全身性ALアミロイドーシス close
この NCCN ガイドライン日本語版「全身性ALアミロイドーシス」は、日本血液学会 造血器腫瘍ガイドライン作成委員会が監訳・監修した。

全身性ALアミロイドーシスは発生頻度が少なく、疾患そのものの認知度が低いため、早期診断はもとより生前診断も困難なことが少なくない。また、進行期の症例では根本的治療はなく予後不良の疾患で、特定疾患(難治性疾患)の一つに挙げられている。しかし、近年多発性骨髄腫に使用される新規薬剤が有効であるとの報告が相次ぎ、本疾患に対する関心も高まりつつある。

本症は全身諸臓器の機能不全として発症するので、初診時の診療科は多岐にわたり、血液内科で診断されることはむしろ少ない。したがって、NCCNガイドライン日本語版「全身性ALアミロイドーシス」の翻訳が行われることは血液内科医にとどまらず臨床家にとってきわめて有意義であると思われる。

以下に本文の記載に追加すべき事項を挙げる。

本症の診断には、初診時検査の項で記載されているように病理学的検査が必須であり、さらに病型確定には免疫組織化学検査が重要である。しかし、市販の抗軽鎖抗体は染色性に問題があること、免疫グロブリン重鎖由来のAHアミロイドーシスが存在することなどから、判定に迷う場合は専門施設での診断が推奨される。また、ALアミロイドーシスにおける過マンガン酸カリウム前処理に対するコンゴーレッド染色抵抗性についての記載がないが、これは本法が不確実な検査であり推奨できないためである。一方、Monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)が存在するからと言って必ずしもALアミロイドーシスとは限らないことが記載されており、重要な指摘である。また、黒人男性にみられる老人性アミロイドーシスを念頭に、2種類のアミロイドの沈着が疑われる場合は質量分析の実施を推奨しているが、米国のガイドライン故である。

治療については推奨レジメンすべてがcategory 2Aとして列挙されている。現時点では治療に関する多くの論文は少数例の後方視的研究であり、前方視的研究であっても無作為化試験はきわめて少ない。したがってガイドライン作成の資料となるエビデンス・レベルの高い論文はほぼ皆無であることを承知しておく必要がある。希少疾患であるが故に、本ガイドラインでも診療にあたっては可能であれば臨床試験の範疇で治療を進めることを強く推奨している。

最後に、本ガイドラインを契機に我が国における本症に対する認識が向上し、エビデンス創生のための臨床試験が実施されることが期待される。

(文責:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会)
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