NCCNガイドラインコメント
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この NCCN ガイドライン日本語版「急性リンパ性白血病」は、日本血液学会 造血器腫瘍ガイドライン作成委員会が監訳・監修した。

Ph陰性ALL患者に対する初回治療は、AYA患者と成人患者に分けて記載されている。AYAを15〜39歳と定義しているが、その上限については議論が残るところであり、30歳代の患者もAYAに含めていることがこのガイドラインの第一寛解期移植適応の記述にも影響を与えているものと思われる。AYA患者については、無作為割付比較試験の結果はないものの、小児プロトコールの有用性が明確になってきているが、T細胞ALLに対する適切な治療法や第一寛解期Ph陰性ALLに対する移植適応など、今後解決しなければならない問題点は残されている。また、成人Ph陰性ALLに対する初回治療でも小児プロトコールを参考にした治療法の開発や、CD20陽性症例に対するrituximabの追加などが試みられている。HSCTの評価にいわゆるgenetic randomizationの臨床試験が引用されているが、年齢という移植によって解決できない要素を高リスク群の因子に含めている臨床試験や、ドナーなし群で非血縁者間移植が数多く行われている臨床試験が含まれており、結果の解釈を困難にしている。また、今後の小児プロトコールによる化学療法の成績向上によってHSCTと化学療法の選択が変化していく可能性についても留意すべきであろう。

Ph陽性ALLに関するNCCNの推奨ではAYAと成人(40〜65歳未満、65歳以上)に分けて記載されているが、年齢区分にはどこに境界を作るにしても議論の残るところであろう。特にPh陽性の場合に現状でAYAと成人を分ける意味があるのかはいまだ明確でなく、両者のコメントも似通ったものとなっている。発症頻度の低い、AYAあるいは小児のPh陽性ALLに対する、化学療法の強度を上げた治療の効果に関する検討は今後のデータを待つ必要がある。一方、移植の適応年齢から検討されたと考えられる65歳以上の場合には上限が不明であり、これはPh陰性の場合と同様である。

(文責:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会)
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