NCCNガイドラインコメント
◎子宮体がん close
NCCNガイドライン日本語版の作成にあたっては日本婦人科腫瘍学会が監修しており、翻訳の際には日本婦人科腫瘍学会治療ガイドラインで使用される用語・表現、または、日本産科婦人科学会編産科婦人科用語集を可能な限り踏襲している。

NCCNガイドラインの原文タイトルは「Uterine Neoplasms」となっているが、上皮性悪性腫瘍(いわゆる「癌」)と間葉系悪性腫瘍(肉腫)の治療指針について述べていることから、日本における治療ガイドライン同様、「子宮体がん」の表現を用いた。内膜癌と肉腫に共通するアルゴリズムは「子宮体がん」として記載されており(UN-1)、次に子宮内膜癌(ENDO)の管理方針、子宮肉腫(UTSARC)の管理方針と続いている。日本の子宮体がん治療ガイドラインでは絨毛性疾患も取り上げられているが、NCCNガイドラインでは絨毛性疾患の記述はない。

NCCNガイドライン日本語版では、記載されている内容に関して日本の実地臨床の現状にそぐわない場合があることに留意すべきである。例をあげると、NCCNガイドラインでは再発リスクを有するT期症例に対する術後補助療法として腟内小線源治療を第一に奨めている。一方、日本では術後補助療法として化学療法を選択することが多く、子宮体がん治療ガイドラインのフローチャートでは「化学療法」が第一に挙げられている。センチネルリンパ節マッピングに関しても、日本では「センチネルリンパ節生検によるリンパ節郭清の省略は日常診療での実践は奨められていない。」としているが、NCCNガイドラインでは、子宮外進展が認められない症例に対しては「SLNマッピングを考慮することができる」とし、その評価方法などが詳細に述べられている。
薬剤に関しては、子宮内膜癌に対するホルモン療法剤・化学療法剤として挙げられているタモキシフェン、アロマターゼ阻害剤やリボゾーム化ドキソルビシン、トポテカン、ベバシズマブなどは、本邦では子宮体癌に対する保険適応はない。

今回のNCCNガイドラインの改訂では、ミスマッチ修復遺伝子に関連する子宮内膜癌の管理が新たに加えられている。この点に関しては、現在改訂作業が行われている「子宮体がん治療ガイドライン2018年版」ではCQとして取り上げておらず、今後国内においてもエビデンスを整理していく必要がある。

NCCN ガイドラインは最新の知見を取り入れながら改訂を重ねており、また、豊富で質の高い文献が網羅されている。日本と米国との医療制度の違いを理解した上で、日常診療において参考にしていただきたい。
 
日本婦人科腫瘍学会 ↑このページの先頭へ
close