NCCNガイドラインコメント
◎乳癌および卵巣癌における
   遺伝学的 / 家族性リスク評価
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このNCCNガイドライン日本語版「乳癌および卵巣癌における遺伝学的 / 家族性リスク評価」の翻訳に関しては、 日本婦人科腫瘍学会および日本乳癌学会が監訳したものである。 近年のゲノム医学の発展は様々ながん特異的遺伝子異常を明らかにしてきた。本ガイドラインはBRCA関連乳癌卵巣癌症候群のほか、 リ・フラウメニ症候群やカウデン症候群/PTEN過誤腫症候群(PHTS)につき、これらの遺伝子変異、発症頻度、浸透率、表現型等の病態とリスク評価、 遺伝カウンセリングと遺伝学的検査、およびサーベイランスとリスク低減策について記載されている。

遺伝性腫瘍一般についていえることであるが、用語集が策定されておらず、言葉の統一がなされていない。 そこで本ガイドラインの翻訳については日本人類遺伝学会、日本家族性腫瘍学会、 Gene Reviews 日本語版 (http://grj.umin.jp/)で使用されている語を 優先して使用することを原則とした。そのため今後、各方面で用語集が策定された場合は変更される可能性がある。

2014年まで本ガイドラインにおいては、リスク低減卵管卵巣摘出術(Risk-Reducing Salpingo-Oophorectomy: RRSO) を施行しない場合30-35歳から半年ごとの経腟超音波検査と血清CA125検査が勧められていたが、 2016年以降の版では経腟超音波検査と血清CA125によるスクリーニングを積極的に薦めるだけのデータはないことが記載され、 より一層RRSOの卵巣癌と乳癌に対するリスク低減効果を強調する内容になった。 2018年以降の版では遺伝学的検査に基づいた乳癌および卵巣癌のリスクに関連する遺伝子を取り上げ、管理指針が掲載されている。

なお本ガイドラインに記載されている内容は、米国における医療を背景としている点に留意する必要がある。 出生前診断については今後本邦でも一般診療として認められる方針となったが、 日米間の診断対象の違いを念頭においてガイドライン内容を検討する必要がある。 また、本邦では未発症者における遺伝学的検査、 リスク低減手術に関する費用は保険収載されていないことに留意して診療にあたる必要がある。

 
日本婦人科腫瘍学会

日本乳癌学会

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