NCCNガイドラインコメント
◎大腸がんにおける遺伝学的/家族性リスク評価 close

この NCCN ガイドライン日本語版「大腸がんにおける遺伝学的/家族性リスク評価」の翻訳に関しては、大腸癌研究会が監修したものである。

大腸癌全体の20〜30%に家族集積性を認め、5%未満は原因遺伝子が明らかな遺伝性大腸癌と考えられている。
本ガイドラインに記載されている内容は、米国の医療技術、診療体制および医療経済を背景としている点に留意する必要がある。
本ガイドラインでは、高リスク大腸癌症候群として、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症、MUTYH関連ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群、若年性ポリポーシス症候群、鋸歯状ポリポーシスなどを取り上げ、疾患の概要と診断、リスク評価に基づく医学的管理について解説されている。 疾患に対する遺伝学的検査についてはわが国の実情に合わない点も多いが、この点を除けばおおむねわが国の実地医療にも適応できる点が多い。
( 文責:大腸癌研究会 )

【和訳文について】
和訳文の作成にあたっては原文に忠実な翻訳を原則としたが、日米の表現法の相違、用語の定義の相違などのために、直訳では誤解を生じる恐れがあるものについては、日本語として適切に判断される表現に置き換えた。なお、「colon」、「colonic」、「extracolonic」等の訳については、内容を吟味したうえで、適宜「結腸」、「直腸」、「大腸外」などとした。


訳出例

Variant
バリアント
[説明]  近年は「多様体」ではなく、「バリアント」バリアントと和訳されることが多い。近年、遺伝学の領域では変異(mutation)とバリアント(variant)の二つの用語も用い方に混乱がある。変異(mutation)を用いずに、バリアントをclass 1〜class 5に分類する傾向にある。

Attenuated FAP
Attenuated 型FAP
[説明]  ポリープ数が概ね100個未満の家族性大腸腺腫症の一亜型。「軽症型」等と訳されることもあるが一般的ではない。

Deleterious mutation
病的変異
[説明]  Pathogenic mutationと同義. 本ガイドラインで単にmutationと記載されている箇所でも,文意は「病的変異」と解釈される。

At risk
リスクが考えられる(状態、人)
[説明]  必ずしも実際に大腸癌のリスクが高い状態ではなく、(優性遺伝性の場合)罹患者の第1度近親などで、罹患者である可能性がある場合をいう。

Mutation carrier
遺伝子変異保持者(あるいは保因者)
[説明]  遺伝性腫瘍の領域では「保因者」は劣性遺伝の場合に用いるのが通例。優性遺伝の場合は「保持者」とした。

Genotype
遺伝型
[説明]  近年わが国では「遺伝子型」ではなく「遺伝型」が用いられる傾向がある。

Adenoma burden
腺腫の程度
[説明]  腺腫の数、大きさ、組織像を考慮した個体が担う腺腫の状態の意。ここでは「腺腫の程度」と訳した。

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