注)肛門部の定義について
本ガイドラインは、肛門部 (anal region) を肛門管 (anal canal)と肛門辺縁 (anal margin) に分けて記載している。両者の境界は肛門縁 (anal verge) である。このうち(機能的)肛門管はanorectal ringから肛門縁までと規定されており、大腸癌取扱い規約の肛門管(P)と一致している。一方、大腸癌取扱い規約で肛門周囲皮膚 (E )としている領域のうち肛門縁から半径5cm以内を肛門辺縁と規定しているのは本ガイドライン独自の定義である。しかし、肛門部に関する解剖学的定義は「結腸と直腸の区分」のような日本と欧米との相違はない。
【和訳文について】
和訳文の作成にあたっては原文に忠実な翻訳を原則としたが、日米の表現法の相違、用語の定義の相違などのために、直訳では誤解を生じる恐れがあるものについては、日本語として適切に判断される表現に置き換えた。
訳出例
Anal margin, anal margin cancer
肛門辺縁、肛門辺縁癌
[説明] わが国では一般にanal marginは「肛門側切除断端」を意味する。本ガイドラインのanal marginは肛門縁から半径5cm以内の肛門周囲皮膚である。ここではanal marginを肛門辺縁、anal margin cancerを肛門辺縁癌とした。
Early-stage
進行度の低い
[説明] 本ガイドラインではearly stageを「TisとT1」と規定して使用しているが、肛門癌のTNM分類でT1は「腫瘍径が2cm以下の腫瘍」でありSM癌ではない。“early-stage”とわが国の「早期癌」とは異なるものであり、混乱を避けるため「進行度の低い」とした。
Metastatic disease
遠隔転移癌
[説明] 大腸癌のmetastatic diseaseと同様に、切除不能な転移病変の意であるが、肛門癌では大腸癌ほど遠隔転移巣切除の有効性が明確に示されていなことから、技術的に切除可能な病変も含まれる可能性がある。ここでは、リンパ節転移以外の転移病変という意味で「遠隔転移癌」とした。
Persistent disease
不変
[説明] 本ガイドラインでは、化学放射線療法の治療効果をprogressive disease(進行)、 complete remission(完全寛解)と persistent diseaseの3カテゴリーに区分している。Persistent diseaseは、癌遺残はあるが増大はしていないというカテゴリーである。直訳では意が伝わりにくいので、「不変」と訳した。
|