NCCNガイドラインコメント
◎乳がん 検診と診断 close

このNCCN ガイドライン日本語版「乳癌 検診と診断」は、日本乳癌学会が監訳・監修したものである。本ガイドラインは、乳がん検診と診療を目的とする乳房画像検査を主体とする乳癌の診断について網羅的にカバーしており米国で広く使用されている。日本では、日本乳癌学会が「乳癌診療ガイドライン(治療編)、(診断編)」を長年にわたって(定期的に)独自に刊行しているので、「乳癌診療ガイドライン:検診・画像診断」の執筆メンバーが当NCCNガイドライン「乳癌 検診と診断」の日本語監訳を担当した。よって、両ガイドラインにおける用語の使い方の一貫性には配慮している。また、両ガイドラインの大きな差異について以下に述べる。

日本では乳房画像検査を乳がん検診と診療目的とする乳癌精密検査の区別を厳格にすることがまだ普及していないが、日本乳癌学会は「検診カテゴリー」と「診断カテゴリー」を区別して、「診断カテゴリー」に基づいて乳腺診療のマネジメントを均てん化することを推進し、「検診カテゴリーと診断カテゴリーに基づく乳がん検診精検報告書作成マニュアル」を作成した。診断カテゴリーとNCCN ガイドラインで使用されているBI-RADSカテゴリーの推奨マネジメントは同一である。しかし、BI-RADSカテゴリーにおける検診マンモグラフィの判定では、カテゴリー0(検査不十分:追加の画像診断を要する=要精検)か、カテゴリー1および2(正常および良性:推奨マネジメントは両方とも定期マンモグラフィ検診)を用いる規則となっており、検診マンモグラムの読影判定ではカテゴリー3, 4, 5の使用は原則禁止である。日本では、従来の悪性確信度を表した日本のマンモグラフィガイドラインカテゴリーを「検診マンモグラフィカテゴリー」と改称し、検診カテゴリー3以上を要精検とする。つまり、日本の検診マンモグラフィカテゴリー(検診カテゴリー)3, 4, 5は、BI-RADSの検診カテゴリー0に相当する。BI-RADSも、乳がん検診要精検で精検機関を紹介されて受診した患者には、必ず乳がん検診カテゴリーと診断カテゴリー(乳房画像診断の最終判定カテゴリー)の2つの判定カテゴリーがデータとして保存されるルールとなっている。

日本人の乳癌発症リスク評価にGailモデルが使用できないことにも注意が必要である。なぜなら、Gailモデルのデータにアジア系アメリカ人が追加されているが、日本在住の日本人を対象としたデータは考慮されていないからである。わが国にも乳癌発症のリスク評価システムの作成が望まれている。

NCCNガイドラインを活用する際には上記の注意事項を理解したうえで、日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン:検診・画像診断」と読み比べて、両者のガイドラインを上手に活用して頂きたい。

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