この NCCN ガイドライン「悪性胸膜中皮腫」 (2015 年第 2 版 ) の翻訳は、日本肺癌学会が監訳した。
日本肺癌学会は悪性胸膜中皮腫に対する診療ガイドライン(第1版, 2007 年)の引用文献が 2005 年までのものであり、その後、中皮腫に関する新たな知見が得られているため、現在、改定作業を行っているところである。悪性胸膜中皮腫の病理診断の手引き(2013年)は公開しているので参考にして戴きたい。
今回の NCCN 悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン (2015 年第 2 版 ) は、最近の臨床知見を取り入れた内容であるが、比較的稀な悪性腫瘍であることから、エビデンスレベルの高い臨床試験は少なく、単施設第U相試験や専門家の意見を集約した内容も含まれている。従って、一部には専門家の意見が一致しない領域のあることを御理解頂き、日常臨床の参考にして戴ければ幸いである。 翻訳内容は十分に吟味したが、翻訳に関する問題点があれば、ご指摘をいただければ幸いである。
補足:専門家の意見の一致をみない代表的な領域は外科治療である。英国の MARS 試験 ( M esothelioma a nd R adical S urgery ; Lancet Oncol , 12:763-72, 2011 ) で胸膜肺全摘術と化学療法単独治療が比較され、外科治療に有益性がなかったとの結論の解釈である。 NCCN のガイドラインでは、 NCCN 委員会と数名の専門家は、 MARS の結果を否定した立場で、低リスク患者には胸膜肺全摘術を推奨するとしている。一方、 MARS は治療法の優劣を比較する臨床試験ではなく、これからは結論を導き出せないという専門家の意見もある ( Lancet Oncol , 12:1093-4, 2011 ) 。欧米では中皮腫の急増が我が国よりも早く訪れたため、欧米の呼吸器外科医の手術経験が多いのは確かである。情報源に遡って確認されることをお勧めする。 |