◎NCCNガイドライン造血器腫瘍領域における 監訳・監修にあたって |
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このNCCNガイドライン造血器腫瘍領域の翻訳は、日本血液学会が監修した。
NCCNガイドラインは米国で作成されたものであるが、世界的に広く参照されている。日本血液学会において作成した「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」(以下、日血診療ガイドライン)においても、重要な二次情報としてNCCNガイドラインの内容は数多く引用されている。しかし、NCCNガイドラインは米国における医療体制、保険制度に基づいており、本邦との相違を理解した上で利用する事が必要である。以下に日血診療ガイドラインとの相違点を中心に記載する。 米国では医薬品の安全性と有効性の評価は食品医薬品局(FDA)により行われる。しかし、その医薬品が保険で償還可能かどうかはCMS (Centers for Medicare and Medicade Services)が独立して判断する。保険償還の判断根拠は、CMSにより認定された4つのコンペディア(医薬品処方指針)または26のpeer-reviewed journalに記載されている事で、その場合は適応外使用も“妥当かつ必要”と判断され保険償還が可能とされる。NCCNガイドライン(以下、本ガイドライン)に基づくNCCNコンペンディウムはその1つであり、それだけ臨床的に高く評価されていると考えられる。一方日本では新薬の承認は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬事法に基づき承認審査を行い、ここで承認された適用が保険償還の対象となり、米国で保険適用とされる抗腫瘍薬のうち半数以上が適応外となっている。従って、日本では適応外または未承認の薬剤が本ガイドラインでは数多く記載されている。 本ガイドラインにはカテゴリー2Aレベル以上の多くの薬剤、治療法が網羅的に記載されている。さらに本ガイドラインは、頻回にアップデートされて最新の臨床研究が取り入れられ、重要な知見についてはエビデンスとしての確定前にも記載される場合がある。また、本ガイドラインではエビデンスが不十分な場合あるいはセカンド、サードライン治療については、臨床試験への参加が選択肢として多く記載されているが、日本では参加できる臨床試験は少ない。 推奨グレードは、エビデンスのレベルとエビデンスの数と結論のばらつき、臨床的有効性の大きさ、臨床上の適用性、有害性や費用に関するエビデンスの各要素を勘案して総合的に判断される。本ガイドラインでは推奨グレードについては、エビデンスとコンセンサスによるカテゴリーとして1、2A、2B、3と4段階に分けて表記している。日血診療ガイドラインでも、この表記法を採用しており、適応外薬、未承認薬については日本の保険制度のもとでは使用できないことを明記した上で記載している。また、エビデンスレベルを明記した上で日本のデータをなるべく多く引用する様にした。 最近では、診療ガイドラインは「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスの系統的レビューとその総体的評価、益と害のバランス等を考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するため最適と考えられている推奨を提示する文書」と定義され、特に患者側の利益得失が重視されるようになった。本ガイドラインも日血診療ガイドラインも上記の意味では害の部分への評価は十分とは言えず、費用対効果の判断も含まれていない。 以上のようにNCCNガイドラインの特性、日米の背景の相違を考慮した上で、本ガイドラインや日本のガイドラインを参照する事が重要と考えられる。造血器腫瘍の各病型に対しては、各監修担当者が個別にコメントを記載している。 本ページに掲載している造血器腫瘍領域ガイドライン内の用語、薬剤名については、一般社団法人日本血液学会が作成した「造血器腫瘍取り扱い規約第1版」および「造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版」の編集方針に従って記載した。 ●用語について ●薬剤名について
今回公開した『ホジキンリンパ腫』、『ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫』、『多発性骨髄腫』、『全身性ALアミロイドーシス』、各ガイドライン内での国内承認薬と国内未承認薬については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)で公開されている2014年4月14日時点の添付文書情報を参照した。 |
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(文責:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会委員長 大西一功) |
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