NCCNガイドラインコメント
◎子宮体がん close
NCCN ガイドライン日本語版の作成にあたっては日本婦人科腫瘍学会が監修しており、翻訳の際には日本婦人科腫瘍学会治療ガイドラインで使用される用語・表現、または,日本産科婦人科学会編産科婦人科用語集を可能な限り踏襲している。

NCCNガイドラインの原文タイトルは「Uterine Neoplasms」となっているが、上皮性悪性腫瘍(いわゆる「癌」)と間葉系悪性腫瘍(肉腫)の治療指針について述べていることから、日本における治療ガイドライン同様、「子宮体がん」の表現を用いた。内膜癌と肉腫に共通するアルゴリズムは「子宮体がん」として記載されており(UN-1)、次に子宮内膜癌(ENDO)の管理方針、子宮肉腫(UTSARC)の管理方針と続いている。さらに、本ガイドラインの病期分類は、2010年版のFIGO分類を採用している。日本の子宮体がん治療ガイドライン2013年版では新たに絨毛性疾患の章が加えられたが、NCCNガイドラインでは絨毛性疾患の記述はない。

NCCN ガイドライン日本語版では、記載されている内容に関して本邦の実地臨床の現状にそぐわない場合があることに留意すべきである。例をあげると、 NCCN ガイドラインでは再発リスクを有するT期症例に対する術後補助療法として腟内小線源治療を第一に勧めている。一方、日本では術後補助療法として化学療法を選択することが多く、子宮体がん治療ガイドラインのフローチャートでは「化学療法」が第一に挙げられている。NCCNガイドライン2014年版では、センチネルリンパ節生検について詳細に述べられているのが一つの特徴である(ENDO-B)。日本のガイドラインでは、センチネルリンパ節生検によるリンパ節郭清の省略は日常診療での実践は奨められていない。
 それ以外でも、NCCNガイドラインでは癌肉腫に対する化学療法は「イホスファミド+パクリタキセル」が第一選択であり、日本の実情とは異なっている。薬剤に関しては、子宮内膜癌に対するホルモン療法剤・化学療法剤として挙げられているタモキシフェン、アロマターゼ阻害剤やリボゾーム化ドキソルビシン、トポテカン、ベバシズマブなどは、本邦では子宮体癌に対する保険適応はない。

NCCN ガイドラインは最新の知見を取り入れながら改訂を重ねており、また、豊富で質の高い文献が網羅されている。日本と米国との医療制度の違いを理解した上で、日常診療において参考にしていただきたい。
 
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